【税理士コラム】株主優待投資のメリット・デメリットとオススメの株主優待銘柄

こんにちは、公認会計士・税理士・1級FP技能士の安田亮です。税理士としてお客様の税金相談に乗ることはもちろん、自らの資産運用の経験を活かし、貯蓄や投資についてのアドバイスも行なっています。
前回は、【税理士コラム】家計を見える化する!簡単に始められる家計簿管理方法をご紹介にて、家計簿管理の目的と、その始め方について解説いたしました。今回は、株主優待投資のメリット・デメリットとオススメの株主優待銘柄についてご紹介します。
あるTV番組に桐谷さんという将棋の棋士兼株主優待銘柄に特化した個人投資家の方が出演して以来、株主優待投資が流行しています。
株主優待とは、「株主になってくれてありがとう」という意味合いから、企業が配当金とは別に、株主に対して自社製品や優待券、クオカード、カタログギフトやお米などを送る制度のことです。
配当金については、会社法105条第1項第1号で「利益配当請求権」という権利が定められているので、企業は利益を出したら基本的には配当をしなければなりませんが、株主優待はあくまで企業が自主的に行なっているものです。
2017年9月末時点の調査結果ですが、上場企業3,723社中1,368社が株主優待を実施しています。実に36.7%もの会社が株主優待を実施していることになります。
【参考】大和インベスター・リレーションズ株式会社「株主優待ガイド」
https://www.daiwair.co.jp/pdf/pr171110.pdf
目次
株主優待投資のメリット・デメリット
株主優待を実施している会社の株式に投資することのメリット・デメリットについてお話しします。
メリットとしては、株主優待を実施している会社の株価は下がりにくく、また一度下がった場合でも株価は戻りやすいという傾向があります。株主優待銘柄を保有する投資家は、株主優待を得ることを目的として保有している方が多いため、長期保有の株主が多い傾向にあります。長期保有の株主が多いということは、売る株主が少ないということであり、株価が下がりにくくなります。
また、何かのきっかけで株価が下落したとしても、株主優待銘柄はその人気故に、優待の権利獲得日に向けて株価は戻っていく傾向にあります。
一方、株主優待はあくまで企業が自主的に行なっているものですので、配当金よりも簡単に改悪または廃止されやすいというデメリットがあります。また、株主優待を目当てに株式を保有している株主が多いため、「優待を廃止します」というプレスリリースを出した会社の株価は大きく下がることがありますので注意が必要です。
おススメの株主優待銘柄
株主優待で得られる物やサービスには様々なものがありますが、生活に直結していて使いやすいものを中心に、オススメの銘柄をお伝えいたします(以下、会社名の後の4桁の番号は証券コードを表しています)。
※投資判断はあくまでも自己責任にてお願いいたします。利益を保証するものではございませんので、ご注意ください。
【1】イオン株式会社(8267)及びマックスバリューグループ
イオンの株主になると「オーナーズカード」というカードをもらえます。
これをイオングループのスーパー(※)で購入する際にレジで提示すると「株主の●●様が■■円の買い物をした」という情報がイオンのデータベースに蓄積され、半年毎に買い物額の3~7%が還元されます。還元率は保有株数で異なり、以下のようになっています。
100株 → 3%
500株 → 4%
1,000株 → 5%
3,000株 → 7%
現在、1株2,200円ほどですので、7%の還元を得るためには660万円ほどの投資が必要になります。(2018年1月4日時点)
(※使える店舗:https://www.aeon.info/ir/stock/benefit/card/#shop)
適用される買い物金額は半年で100万円までという制限がありますが、これを超える方はなかなかいないと思います。
また、キャッシュバックの方法ですが、イオンから自宅宛てに引換券のようなものが送られてくるので、近くのイオンのサービスカウンターに身分証明書とともにその引換券を持っていけば、その場で現金がもらえます。
イオンの株主優待の良い点は、イオングループのマックスバリュー系列の株主優待と併用して使える点です。マックスバリューグループでは、1,000円の買い物につき、1枚(100円)使える株主優待券がもらえるところが多いです。これはマックスバリューだけではなくイオンでも使えます。更に、それに合わせて20日・30日のお客様感謝デー(5% offの日)に買い物すれば、更に安く買えます。
これらの株主優待を上手にピッタリ使い切ったとすると、
5%(お客様感謝デー)+ 10%(マックスバリュー株主優待券)+ 7%(イオンオーナーズカードの最大還元率)= 22%
22%もお得に買い物ができるというわけです(実際は端数が出て、マックスバリュー優待券をピッタリ使い切ることはできません)。
もし普段の買い物がイオンやマックスバリューがメインだという方でしたら、一度は検討してみても良いかもしれません。
【2】クオカードをもらえる銘柄
2つ目は沢山あります。クオカードをもらえる銘柄です。
クオカードをもらえる銘柄はたくさんありますが、還元率の高いものがお勧めです。
ブロードリーフ(3673)や日本ギア工業(6356)辺りが、利回りが高いです。
クオカードはコンビニなどで、ほぼ現金のように使用できます。使い勝手が良いというのはとても大事です。「自社店舗での割引券」などの優待をしている会社もありますが、そもそもそのお店で買い物をしない方には価値はありません。ですが、クオカードであればどこでも使えますから、使えないという恐れはありません。
また、配当金であれば税金が2割引かれますが、優待のクオカードであれば全額受け取れることが多いです。
「全額受け取れることが多い」と書きましたが、株主優待も実は原則的には課税されます。所得税法基本通達24-2では、大まかに次のようなことが書かれてあります。
「株主がその地位に基づいて法人から受け取った株主優待のような経済的利益は…(中略)…その法人が剰余金または利益の処分として取り扱わない限り、配当等には含まれないものとする」
そのため、株主優待は配当所得ではなく、雑所得として申告することになります。
ただし、雑所得は、会社員の方であれば20万円を超えなければ申告の必要はありません。ですので、申告の必要が無い方はクオカードの額面=手取金額になります。
仮にクオカードのみを獲得しに行くのであれば、相当な投資規模でない限り、20万円を超えることは無いと思うので、配当よりはお得になると言えます。
【3】シーズホールディングス(4924)、ポーラ・オルビスホールディングス(4927)
これらの銘柄は株主優待として化粧品をいただけます。
シーズホールディングスの株主になれば、ドクターシーラボの化粧品がもらえます。ただし、1単元(100株)保有しているだけでは株主優待は受けられず、200株からとなります。
毎年1月末時点の株主名簿に記載されている株主が対象となり、200株で1万円相当、400株で2万円相当、600株で3万円相当の化粧品がもらえます。
ポーラ・オルビスホールディングスは12月末の株主名簿に記載されている株主を対象に、自社グループ関連商品と交換できるポイントを付与しています。
付与されるポイントは保有株数によって変わり、
100株 → 15ポイント
400株 → 60ポイント
1,200株 → 80ポイント
2,000株 → 100ポイント
となります。更に3年以上保有している場合は、上記にそれぞれ20ポイントが加算されます。
普段お使いの化粧品がドクターシーラボやポーラの製品であれば、これらの株主優待を使うことで化粧品代を節約することができます。
まとめ
株主優待のメリット・デメリットとオススメの株主優待について紹介してきましたがいかがでしたでしょうか。
株主優待を上手く利用するポイントは、ご自身の生活で使えそうな株主優待を選択するという点にあります。普段使っているスーパーやドラッグストア、化粧品や日用品などを製造しているメーカーなどが、株主優待を実施していないかを調べてみると面白いと思いますので、ぜひやってみてください。
記事 安田 亮(公認会計士/税理士)
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