バリュー平均法のメリット・デメリット!シミュレーションとノーセルバリュー平均法も紹介
株式投資の中に「バリュー平均法」と呼ばれる投資手法があります。有名な「ドルコスト平均法」とは異なり、最終的な目標額をあらかじめ決めた上で投資をしていくやり方です。
手間はかかりますが、計画的に資産形成をしたい方にはおすすめな投資手法として活用されています。
この本記事では、バリュー平均法の特徴やメリット・デメリット、ドルコスト平均法との違いについて解説します。
投資手法を知ることは、資産形成をするための選択肢が広がります。ぜひ参考にしてください。
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この記事の目次
バリュー平均法とは
投資をする際に購入する運用商品は、その時々で価格が変動します。
バリュー平均法は、運用商品の「変動する価格」に着目した投資法です。
評価額を維持しながら投資する手法
バリュー平均法は、保有している商品の評価額に応じて積立時の取引額が変動する手法です。
バリュー平均法を始める際には、まず最終的な目標金額を決めます。次に、目標を達成するためには毎月いくら投資する必要があるかを考えます。
例えば10年後に360万円を達成させたい場合は、毎月3万円(360万円 ÷ 12ヶ月 ÷ 10年)の投資が必要です。
バリュー平均法では、「運用資産の評価額」が1ヶ月目は3万円、2ヶ月目は6万円、3ヶ月目は9万円となるような運用が必要です。
仮に評価額が設定した金額を下回った場合は、目標金額になるように追加で購入する必要があり、評価額が設定した金額を上回った場合は余剰分を売却する必要があります。
この基準となる金額のことを「バリュー経路」といいます。
バリュー平均法は、バリュー経路の金額を達成させるために毎月投資金額が変動する可能性がある投資方法です。
投資手法としての難易度は高い
運用例をご覧になっていただけるとわかるかと思いますが、バリュー平均法は毎月(毎回)投資金額を算出する必要があります。
また、評価額が下落した際にはバリュー経路に合わせるために投資額が増えます。
下落が続いた際も投資を継続させる必要があるため、ご自身の資金力に合わせた目標額の設定が必要です。
これらの点から投資手法としての難易度は高いといえます。
投資初心者の方は、毎月一定額を自動積立するドルコスト平均法での運用の方が向いているかもしれません。
バリュー平均法のメリット
平均取得単価を下げやすい
バリュー平均法では、価格の上昇時に少なく、下落時には多く購入するため平均取得単価を下げやすい傾向があります。
先ほどの表を見ていただくと評価額が下がった際には12口と多く購入していますが、評価額が上がった際には普段より投資額が少なくなったり、投資をしないタイミングも出てきます。
平均取得単価を下げつつ目標金額を達成すると、投資リターンは高くなります。
平均取得単価を下げやすい点がバリュー平均法のメリットです。
投資を続けられれば目標額を達成できる
毎月目標金額(バリュー経路)に向けて投資を行うため、予定通りに運用ができれば必ず目標額に到達できます。
投資による資産形成は不確実性が高いため、継続できれば確実に目標額を達成できる点はバリュー平均法のメリットです。
マイホームの購入資金や子どもの教育費など、あらかじめ「いつまでに◯円準備したい」と目標がはっきりしている場合の資産形成に向いています。
バリュー平均法のデメリット
投資金額管理の手間がかかる
バリュー平均法では、投資時の価格によって投資金額が変動するため手間がかかります。
ドルコスト平均法のように毎月定額を投資する手法では、自動積立の設定ができます。
しかし、毎月の投資額が一定ではないバリュー平均法では、自動積立はできません。
毎月投資額を計算し、購入や売却の取引をご自身で行う手間がかかります。
下落局面では資金不足になるおそれがある
バリュー平均法は、一時的な大きな下落が起きた際や下落局面が続いた際に弱いです。
下落局面であってもバリュー経路に合わせた運用が求められるため、投資額の負担が大きくなり過ぎる可能性もあります。
投資を継続できれば目標金額に到達できますが、下落局面が続くと資金が用意できずに投資を継続できず、目標を達成できない可能性がある点はデメリットといえます。
複利の恩恵を受けづらい
一般的に長期投資では、複利の恩恵を受けながら資産を増やしていくのが基本です。
バリュー平均法の場合、積立時に保有資産の評価額がバリュー経路を超えた際は超過分を売却することになるため、上昇相場で複利の恩恵を受けづらいです。
複利の効果を簡単に解説!単利との違いや投資信託で効果を得る方法
バリュー平均法のシミュレーション
バリュー平均法を用いた投資額のシミュレーション例を紹介します。
投資したい株式や投資信託が決まっている場合は、その金融商品の過去の値動きを調べて参考にしてみましょう。
バリュー平均法のシミュレーションの仕方
バリュー平均法は、始めに「目標金額」と「運用期間」を設定する方法です。
たとえば子どもの教育資金を貯めたい場合、目標金額を240万円、運用期間は10年とします。
次に、「積立回数」を決めます。
毎月1回、2ヶ月に1回、3ヶ月に1回、または半年に1回など、家計の状況に合わせて無理のないく積み立てる回数を設定してください。
投資頻度 | 積立回数(運用期間 10年の場合) |
1ヶ月に1回 | 120回 |
2ヶ月に1回 | 60回 |
3ヶ月に1回 | 40回 |
半年に1回 | 20回 |
「目標金額」や「運用期間」、そして「積立回数」を設定したら、シミュレーションを行います。
その際、前述した投資期間中の資金不足を避けるために、市場の下落時にどのくらい追加投資が必要になるかを予測しておくことが重要です。
シミュレーション例
ここでは、10年後に240万円が目標の方の運用例を紹介します。
毎月積立を行うと仮定すると、毎月2万円(240万円 ÷ 12ヶ月 ÷ 10年)の投資が必要です。
6ヶ月目までの評価額の値動きと、月々の投資額の例です。
1月目 | 2月目 | 3月目 | 4月目 | 5月目 | 6月目 | |
バリュー 経路 | 2万円 | 4万円 | 6万円 | 8万円 | 10万円 | 12万円 |
金融商品の 価格 | 2,500円 | 2,000円 | 3,000円 | 2,500円 | 3,000円 | 4,000円 |
保有資産の 評価額 | 0円 | 16,000円 | 60,000円 | 50,000円 | 96,000円 | 133,600円 |
今月の 投資金額 | 20,000円 | 24,000円 | 0円 | 30,000円 | 4000円 | −13,600円 |
買付口数 | 8口 | 12口 | 0口 | 12口 | 1.34口 | −3.34口 |
累計口数 | 8口 | 20口 | 20口 | 32口 | 33.34口 | 30口 |
1ヶ月目はもともとの保有資産が0円なので、投資額は2万円です。
評価額が2,500円の商品を2万円分、8口(20,000円 ÷ 2,500)購入します。
投資額は「バリュー経路 − 保有資産の評価額」で算出します。
評価額が下がったとき
2ヶ月目には先月2,500円だった評価額が2,000円に下がりました。
保有資産の評価額は、16,000円(2,000円 × 8口)です。2ヶ月目のバリュー経路は40,000円のため、投資額は24,000円(40,000円 – 16,000円)になります。
商品の購入口数は12口(24,000円 ÷ 2,000円)で、2ヶ月目の総保有数は20口になります。
保有資産の評価額がバリュー経路を超過したとき
6ヶ月目のように保有資産の評価額がバリュー経路を超えた場合は、超過分を売却します。
6ヶ月目では、保有資産の評価額がバリュー経路の価格を13,600円超過しています。そのため、取引は購入ではなく売却になります。
バリュー平均法では段階的に目標額に近づけていくため、超過した資産は売却しバリュー経路に合わせていくことになります。
バリュー平均法とドルコスト平均法との違い
バリュー平均法 | ドルコスト平均法 | |
投資金額 | 株価が下がった時は増額 株価が上がった時は減額 | 毎月定額を積立 |
取引内容 | 買いと売りを適宜判断する | 毎月買い |
バリュー平均法の他にも「ドルコスト平均法」と呼ばれる有名な投資手法があります。
バリュー平均法にもドルコスト平均法にもそれぞれメリット・デメリットがあるため、どちらの手法の方が優れているとは一概にいえません。
ここではそれぞれの違いについて解説します。
ドルコスト平均法のメリット・デメリット!やり方やシミュレーション
毎月の投資金額が異なる
バリュー平均法では、バリュー経路とその時点での保有資産の評価額の差額で毎月の投資金額が決まります。
そのため、投資額が多くなる月もあれば、少ない月、投資しない月もあります。
ドルコスト平均法は、毎月の投資額は一定です。毎月2万円を投資すると決めたら、投資額は常に2万円です。
毎月の投資額を計算し取引を行うことが面倒に感じる方であれば、自動積立が可能なドルコスト平均法の方が向いています。
最終的な評価額が異なる
バリュー平均法では、最終的な評価額が最初から決まっています。10年後に240万円を目標に運用した場合、10年後の最終的な評価額は240万円です。
ドルコスト平均法では、売却時の資産の価格によって保有資産の評価額が異なります。
売却時の価格が高いと評価額が高くなり、価格が低いと評価額は低くなります。
同じように、10年後に240万円を目標に積立を行ったとしても、10年後の評価額によっては目標額を達成できないこともあるでしょう。
いつまでに◯円の資金を準備したい、という明確な目標がある方はバリュー平均法での運用がおすすめです。
資金が必要になるタイミングで評価額に左右されないため、ドルコスト平均法で運用するよりも向いています。
運用途中の売却有無
バリュー平均法では、バリュー経路に合わせた運用が求められるため、運用途中の売却があります。売却の手間はありますが、売却分は次回以降の投資資金に充てられます。
明確な目標に向けての運用であれば、投資効率の改善も期待できるでしょう。
ドルコスト平均法は運用途中の売却はしない前提の投資手法です。ひたすら一定額を積立していきます。
運用途中で売却する手間や、売却益にかかる税金などを気にする場合は、ドルコスト平均法で運用する方が向いているかもしれません。
ノーセルバリュー平均法とは
バリュー平均法と似た運用方法として、「ノーセルバリュー平均法」が存在します。
この方法では、投資期間中に株式や投資信託を売却しないことが特徴です。
やり方はシンプルで、バリュー平均法と同様に投資を行い、保有資産の評価額がバリュー経路を超えても売却せずに保有し続けるだけです。
バリュー経路を超えないときはバリュー経路に到達するまで投資します。超過した場合に株式を売却しないことがどのように影響するか、メリット・デメリットを次に紹介します。
バリュー平均法と違い超過しても株を売らない
ノーセルバリュー平均法のメリットは取引手数料や税金を抑えられる点です。
バリュー平均法とは異なり、ノーセルバリュー平均法では資産を過度に売却しないため、取引回数が少なくなります。
そのため、基本的にはバリュー平均法よりも取引手数料が低くなります。
税金については、NISA口座を利用していない限り、売却益に対して20.315%の税金がかかります。
ノーセルバリュー平均法では売却回数を減らすため、売却益に対して発生する税金も少なくなるといえるでしょう。
一方で、ノーセルバリュー平均法のデメリットは、市場の急落(暴落)に弱い点です。
ノーセルバリュー平均法では株式や投資信託の保有額が大きくなるため、市場の急落の影響がバリュー平均法よりも大きくなりやすいです。
この場合、次の投資額が大きくなってしまい、手元資金不足になる可能性が高くなってしまいます。
まとめ:バリュー平均法は経験者向けの投資方法
バリュー平均法は運用商品の評価額の変動に合わせて毎回の投資額を変更します。
評価額が下がったときには多く購入し、評価額が上がったときには購入数を減らします。そのため、平均取得単価を下げつつ目標金額に向けた運用が可能です。
さらに、運用を続けられると確実に目標金額に到達する点も魅力の投資手法です。
とはいえ、毎回の投資額を計算する手間があったり、下落相場に弱いというデメリットもあります。
ご自身の資金力に合わせた目標設定や下落局面に備えるための資金管理、投資額を毎回計算する手間などを考えると、経験者向けの投資手法といえます。
マイホームの購入資金や子どもの教育費など、一定のタイミングで必要な金額が決まっている場合に向いている手法です。
バリュー平均法が資産形成の目的に合う投資手法であるならば、ぜひご活用してみてください。
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