メルカリといえば、スマホを使って要らないものを手軽に売り買いできるアプリとして有名です。匿名での配送サービスが充実していることも、ユーザーに安心感を与えています。そして昨年、同社は株式上場をしました。

その一方で同社は次の事業の柱を作るために様々な取り組みを行っていますが、順調と呼べるものは少ないようです。有望なビジネスを発掘した同社ですが、長期的に投資をする上でどのようなことを注意すればよいのでしょうか。

この記事では同社への長期投資で注意すべきポイントについて解説します。まず同社の経緯をおさらいし、現状について決算書類を見ながら解説します。そして同社が取り組んでいるビジネスについて強みと弱み、そして今後の見通しついて解説します。

目次

メルカリの事業

メルカリとはフリマアプリである「メルカリ」の企画と開発、そして運用を主たるビジネスとしている会社です。フリマアプリとはいわゆるフリーマーケットやバザーのような売買をスマホで行うことができるソフトのことを指します。本社は東京都港区、山田進太郎氏が代表取締役兼CEOを務めています。また同社はこの他に、新規事業を主とした関連会社を5社所有しています。

メルカリの経緯

メルカリは2013年、株式会社コウゾウという名前で設立しました。そして同年7月からフリマアプリ「メルカリ」の配信とサービスを開始しました。さらに同年11月に現在の社名に変更しました。

その後、インターネット中古品売買市場の拡大をけん引し、2015年にメルカリアプリダウンロード数が1000万件を突破しました。そして2016年には売上高約128億円で利益も初の黒字を達成しました。2018年7月同社の発表によると、メルカリアプリダウンロード数は国内で7,100万件、アメリカで3,750万件に達しています。また2018年6月には同社の株式がIPO(新規上場)し話題になりました。

メルカリの現状を決算書で見よう

このように市場に合った潜在的な需要を取り込み、メルカリは順風満帆な成長をすることができました。株式投資をする方にとって魅力ある企業です。

しかし長期的な視点で投資をする場合「企業の現状と将来」について十分な分析が必要です。この時役に立つ方法が「決算書類を見ること」です。まずは同社がHPにて公開している決算書類を基に現状を分析してみましょう。

決算書類で見るべき書類は3つ

決算書を使って投資先の現状分析をする時、注目してほしい書類が3種類あります。それは「損益計算書」「貸借対照表」そして「キャッシュフロー計算書」です。

損益計算書では売上と利益を見ることができます。次に貸借対照表では企業の資産状況と資金調達の仕方が分かります。そしてキャッシュフロー計算書では、損益計算書や貸借対照表では隠れがちな「現金の流れ」を把握できます。

メルカリの売上は「成長株」そのもの

はじめに損益計算書を使って同社の売上や利益を見てみましょう。

【メルカリの損益計算書概要】


メルカリHPより抜粋(単位:100万円)
▲は損失 

メルカリの業績は売上の爆発的といえる成長につきます。営業利益や純利益が損失(赤字)になっているのは事業拡大のために広告費や人件費に多くを割いているからです。「成長産業」と呼ばれる企業ではよく見られる業績推移です。

貸借対照表で資産の現状を把握する

次に貸借対照表を使って同社の資産の状態を分析しましょう。まず近年の同社が有する資産の概要です。

【メルカリの貸借対照表概要】


メルカリHPより抜粋(単位:百万円)

このように資産のほとんどを「現金」で保有しています。同社の様にコンピューターのアプリやシステムを開発するビジネスでは、大きな工場や店舗がいりません。そのため資産のうち「現金」の比率が高くなる傾向があります。

・メルカリ【4385】の資金源は「未払金」だった

貸借対照表では資産の項目をふまえて負債と純資産を確認します。負債と純資産を見ることで資産を得るためにどのような手段を使っているのかが分かります。

【メルカリの負債概要】


メルカリHPより抜粋(単位:百万円)

はじめに注目してほしい点は「未払金」です。2016年では負債の80%以上が未払金になっています。この「未払金」とは何を指すのでしょうか。

同社のビジネスモデルからの推測ですが、未払金とは同社アプリで品物を売却した人が得ている「売上金(現ポイント)」だと考えられます。同社アプリでは開始当初、売上金を貯めてメルカリアプリ内で購入する資金として使うことができました。そのため、メルカリアプリ内に売上金を貯め込む方が増えていき、同社の資産として積み上げられていったのです。

当然ですが未払金はユーザーの皆様の物なので同社が勝手に使えるお金ではありません。しかしその一部を一時的に必要な資金として使用することは可能だと言えます。また資産が多いことは企業の大きさに比例しますので、企業としての評価を高めることができます。

未払金の増加が鈍くなる

しかし2017年から2018年にかけて未払金があまり増えていません。これは2017年11月に発表された同社アプリの「仕様変更」が影響していると言えます。この同社による仕様変更には以下のポイントがありました。

売上金振込申請期限が短縮化(1年間から90日間に)→売上金を長期間置くことができなくなった

この仕様変更によって同社アプリのユーザーは売上金(ポイント)を「いつか使うために」キープすることができなくなったのです。そして同社はこれまでのように未払金を積み上げることが難しくなったのです。そのため2018年の未払金はあまり増えなかったのです。ちなみにこの動きの伏線には売上金を貯め込むことが法規制に抵触する恐れがあったからと言われています。

IPOで資金を手に入れる

アプリの仕組みで未払金を増やすことができなくなった同社ですが、新しい事業に着手するための資金を「IPO(株式上場)」を用いて純資産という形で得ることができました。

【メルカリの純資産概要】


メルカリHPより抜粋(単位:百万円)
▲はマイナス 

この表を見ると2017年から2018年にかけて「資本金」と「資本剰余金」の金額が大幅に増えていることが分かります。一方で「利益剰余金」はマイナスが増えています。ここでこれら用語について解説します。

資本金と資本剰余金とは「出資をした(受けた)お金」

資本とは会社を作るための資金として個人や法人などの「株主」から得たお金を指します。IPOで同社は株式を投資家に売却しましたが、そのお金は「資本金」という形で得たことになります。なお、資本金と資本剰余金に分かれているのは会社法にて「資本の半分は資本準備金(剰余金)にする」という決まりがあるからです。

利益剰余金はビジネスで得た利益を積み上げたもの

一方で利益剰余金とは企業が生み出した利益のうち株主への配当に回さなかった金額を指します。一般的には利益剰余金を使って次のビジネスへ投資を行うことが理想とされています。ところが同社は利益剰余金の赤字がふくらみ続けています。

赤字なのに増資は受けられる

同社は赤字であるにも関わらず、IPOにて資本金を得ることができました。なぜなら同社は新しい事業やアプリの海外進出のために先行投資しているため、その将来性に期待する投資家たちが株式を購入したからなのです。

キャッシュフロー計算書でお金の動きを確認する

最後にキャッシュフロー計算書を確認します。現金の流れを把握することで、ここまでの分析を裏付けることができます。ここで、キャッシュフロー計算書についてもう少し解説します。

キャッシュフロー計算書には3種類ある

キャッシュフロー計算書には大きく3つの計算書に分けられています。3つの名前はそれぞれ営業活動によるキャッシュフロー」、「投資活動によるキャッシュフロー」、そして「財務活動によるキャッシュフローです。今回はそれぞれのキャッシュフロー計算書について分析してみましょう。

営業活動のキャッシュフローでは「未払金」の動きが分かる

営業活動によるキャッシュフローでは企業が本業で得た現金の流れを把握することができます。

【メルカリの営業活動によるキャッシュフロー計算書概要】


メルカリHPより抜粋(単位:百万円)

このように損益計算書では赤字ですが、未払金の増加で現金は入っています。そのためキャッシュフローでは黒字になっています。しかし2018年になると未払金の増加が伸びずキャッシュフローでも現金を減らしています。営業活動によるキャッシュフローで赤字が続くと企業の存続に問題が出てくる可能性があります。

投資活動のキャッシュフローでは大きな動きが無い

投資活動によるキャッシュフローでは企業が設備投資や他社の買収を行った時、逆に売却した時にできる現金の流れを把握することができます。

【メルカリの投資活動によるキャッシュフロー計算書概要】


メルカリHPより抜粋(単位:百万円)

同社の規模とビジネスから見て、運営のための必要な設備投資はあったと言えます。しかし大規模な投資が行われたとは言えません。

財務活動で次の事業への資金を得る

財務活動によるキャッシュフローでは借金や株式の売却・発行による現金の取得や借金の返済や株主への配当による現金の減少を表します。

【メルカリの財務活動によるキャッシュフロー計算書概要】


メルカリHPより抜粋(単位:百万円)

同社はこの2年間で大きな借金をしています。また、2018年ではIPOを行ったことで多くの現金を手に入れられたことが分かります。

このようにキャッシュフロー計算書を分析することで、2018年になって本業で手に入る現金が減っており、次なる投資への資金を得る手段としてIPOをしたことが推測できます。

フリマアプリで成功したが決して安泰ではない現状

ここまでの分析でメルカリの現状は以下のようになります。

●メルカリアプリは多くのユーザーから支持を受け普及した
● それによって多くの資金(未払金)が同社に集まった
● しかし法規制の問題があり未払金を増やすことに限界が生じる
● 株式を上場することで新たな資金を集めることができた
● 新たな資金で海外進出や新規事業への投資を続けることができる

このように同社はフリマアプリで成功したものの、本業は頭打ちの状態になっていると言えます。そして次の事業の柱を育成するために模索をしているのが現状だと言えます。

メルカリの今後については保守的に見積もってみよう

次に同社フリマアプリの今後について分析してみましょう。これから投資をする方にとって今後を見通すことはより重要です。確かに今後のことを完全に見通すことは不可能です。しかしこれまでの業績や情報を基に今後同社の利益を削り取る可能性のある要素を挙げていくことをお勧めします。同社の今後に起こりうる良くないことを分析することで投資に対しても保守的に見積ることができます。

フリマアプリは新規開拓から既存客の単価アップへ

はじめに、本業のビジネスがどの段階にあるかを分析しビジネスとしての「伸びしろ」を推測します。同社はフリマアプリ開始の2013年から累計7,100万のダウンロードを受けたと発表しています。この数字は機種変更などによるものも含まれているとしても、日本人のほぼすべての人に同社のフリマアプリが普及していると考えられます。同社の発表でもユーザーの利用頻度を高めることが今後の課題としています。今後の展開によってユーザーの利用頻度が高まる可能性はあります。しかしこれまでのような爆発的な利用者数の増加は望めないと言えます。

フリマアプリへの新規参入は容易

次に本業に対して新規参入の難易度を分析し、顧客の取り合いになる可能性を分析します。同社のフリマアプリはスマートフォンでの利用に特化したことが多くのユーザーをひきつけました。しかしフリマアプリは開発する能力さえあれば比較的簡単に参入することができます。実際、楽天系のフリマアプリが手数料の安さと楽天ポイントを武器にして参入しています。その他でも分野を特化したフリマアプリなどの参入もみられます。今後は各社でユーザーの取り合いになり、メルカリだけが高い業績を上げることは難しくなると言えます。

技術革新が代替品を生む可能性

同社はスマートフォンという新しい技術が普及する中で成功しました。一方でこれまで中古品売買を扱っていた企業は同社に市場を奪われました。これは近い将来、様々な技術革新に伴い同社のビジネスに取って代わる企業が生まれる可能性があることを示しています。このような事例としてフィルムカメラがデジタルカメラに取って代わられたことがあります。

海外進出や新規事業も順風満帆とは言えない

では、同社が手掛けている海外進出や新規事業に見通しはあるのでしょうか。仮にフリマアプリの今後が頭打ちでも、それに代わるビジネスが育つのであれば問題ないと言えます。まず新規事業ですが、同社のHPでは関連会社として新規事業を始めているものがあります。しかし同社の業績に大きく貢献するビジネスに育っているものはまだありません。

フリマアプリは海外で受け入れられないことがある

また同社はフリマアプリの海外進出も手掛けています。ところが英国子会社では利益をほとんどあげることができないとして、今年に入って撤退を発表しました。同社はその要因の詳細を発表していません。しかし推測できることがあります。それは文化的に受け入れられなかったからではないかという理由です。

英国では要らないものは売らずに「寄付する」

同社のフリマアプリが日本で人気になったのはユーザーが「要らないけどお金にならない」と思っていたものがお金になって、さらにそのお金で欲しいものを買うことができるという流れがあったからだと言えます。

ところが英国では「要らなくなったものは寄付する」という文化が根付いています。そして不用品の受け入れ先としてチャリティーショップという店があり、そこでは市民から集まった不用品が格安の値段で販売されています。

さらにチャリティーショップで買い物することでそのお金が貧困者の救済やがん撲滅の活動に充てられるのです。このような活動に賛同する市民が多い中で、自分の利益のために不用品を売買するという活動は受け入れにくかったのではないかと言えます。

メルカリの新規事業や海外進出が「第2のメルカリ」にはなっていない

ここまでの分析で同社の今後の見通しについて以下のことが言えます。

● 本業のフリマアプリに高い成長は望めない
●  長期的に見れば技術革新によって衰退する可能性がある
● 海外進出は地域によって成果が変わる
● 新規事業は未知数の状態

さらに決算書の分析をふまえると同社に投資するポイントとして以下のことが言えます。

● 本業のフリマアプリは当面利益を出すことは可能
● 一方で本業頼みの状態が長引くと危険
● 投資するのであれば新規事業や海外事業を見極めることがポイント

この分析は保守的に見積もったものです。一方でより楽観的な見解もあります。しかし損をしない株式投資を目指すのであれば、保守的な見解をふまえた投資を行うことをお勧めします。

決算書を読み慣れることが健全な投資への第1歩

株式投資で儲けるためには「誰も知らない情報を探さないとけない」というイメージがありますよね。しかし健全な投資を行うためには必要ありません。今回の記事も公開されている限られた情報だけでしたが、メルカリの現状について多くを読み取ることができました。決算書は一定のルールを覚える必要がありますが、数をこなせば誰でも読み慣れることができます。

今後の見通しは「順調でない可能性」について考慮する

そして投資をする上でより大切なことは今後の見通しについて過度に楽観視してはいけないということです。ビジネスとは競争社会です。企業の利益を損なう不測の事態があって当然です。したがって株式投資をする時は投資先の企業が不遇な時でも乗り越えられる能力について見極めることが重要です。

※投資はあくまでも自己責任となります。利益を保証するものではありませんので、ご注意ください。

さいごに

メルカリはこれまでの中古品売買に新しい形を作り出しました。そして同社は次に向けて試行錯誤を始めている段階だと言えます。またそのために必要な人材を集めているようです。そのようなハングリーでかつチャレンジングな精神は同社の今後に期待を寄せることができます。

記事 湯川 国俊

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