投資をする際に必要になる証券口座の作成には、SBI証券や楽天証券など様々な選択肢が存在します。

証券会社は必ずしも1社に絞り込む必要はなく、複数の証券口座を保有・併用して運用しても構いません。

むしろ2つ以上の証券口座を保有しているほうがメリットが多く、自分の投資スタイルの幅が広がる可能性があります。

ただし、複数口座を持つことによるデメリットや注意点もあるため、しっかりと理解して自分に合った方法を見つけることが大切です。

この記事では、証券口座を複数保有するメリットやデメリット、目的別のおすすめ証券会社を解説します。

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証券口座は複数持ちするべきか

証券口座は複数持ちするべきか

同じ証券会社で1つ以上の口座を開設することはできませんが、複数の証券会社で口座を開設すれば複数の証券口座を保有できます。

証券口座を複数持ちする場合、メリットとデメリットが存在します。

基本的に証券口座の複数持ちはデメリットよりもメリットのほうが大きいため、ほとんどの方が恩恵を得られるでしょう。

口座を開設して保有するだけであれば、原則として手数料や管理費はかかりません。

気になる証券会社があれば、口座を開設してみることをおすすめします。

証券口座を複数持つメリット

証券口座を複数持つメリット

証券口座を複数持つメリットは次の通りです。

  • 各社が提供するツールやサービスが使える
  • IPOの当選確率アップが期待できる
  • 取引手数料がお得になる
  • トラブル発生時のリスクヘッジになる
  • 自分に合った証券会社が見つかる

ここでは、それぞれのメリットを詳しく解説します。

各社が提供するツールやサービスが使える

証券口座を複数持つメリットは、各社が提供するツールやサービスを利用できる点です。

具体的には、その証券会社のみが扱っている銘柄の購入やクレジットカード決済によるポイント付与、独自のアナリストレポート・情報サービスの利用などがあります。

代表的な証券会社のツールやサービスは次の通りです。

証券会社 主なツール・サービス
SBI証券 Tポイント付与、PTS取引(夜間取引)、IPOチャレンジポイント、日経CNBCの一部番組の無料視聴
楽天証券 楽天ポイント付与、マネーブリッジ(楽天銀行との口座連携)、日経テレコン・会社四季報の無料購読
マネックス証券 1株単位での取引、無期限信用取引・短期信用・ワンデイ信用、暗号資産CFDの取扱い

証券口座を複数持つと、こうした各社の強みを使い分けられるメリットが生まれます。

IPOの当選確率アップが期待できる

「IPO」とは、未上場の企業が上場する際に新規公開される株式のことです。

一般的な株式投資とは異なり、抽選によって株式の購入権を獲得する必要があります。

IPOの購入権は証券会社ごとに割り当てられているため、複数の証券口座から応募すると当選確率を高められます。

ただし、証券会社によって対応している銘柄が異なる点には注意が必要です。

IPO投資を行う場合は、各社の取扱銘柄をしっかりと確認しておきましょう。

取引手数料がお得になる

証券会社によっては取引額に応じて手数料が変動するため、複数の証券口座を上手く活用すれば、取引手数料がお得になります。

たとえば、SBI証券と楽天証券の国内株式投資では、1日の約定代金合計が100万円以内の場合、取引手数料が無料に設定されています。

同じ株式投資を行うにしても、SBI証券と楽天証券に資金を分散することで、1日の約定代金が100万円未満におさまる(手数料が無料になる)可能性が高くなるということです。

取引手数料を最小限に抑えたいなら、証券口座を複数持つことをおすすめします。

参考:株式会社SBI証券「国内株式現物取引 アクティブプラン」
参考:楽天証券株式会社「国内株式手数料「いちにち定額コース」の無料範囲拡大!1日あたり100万円まで無料!」

トラブル発生時のリスクヘッジになる

証券口座を複数持つことで、トラブル発生時のリスクヘッジにつながるのもメリットでしょう。

オンライン上で取引をする証券会社には、サーバーダウンによって一時的に取引ができなくなるリスクがあります。

しかし、複数の証券口座を保有していれば、一つの証券会社がトラブルで使えないときでも取引機会を逃すことがありません。

また、証券口座を複数持っていると証券会社の倒産リスクにも備えられます。

証券会社には「顧客資産の分別管理」が法律で義務付けられており、万一の倒産時でも最大1,000万円までの補償が受けられます。

ただし、倒産時は保有していた商品そのものが返還されるのではなく、換金されて返還される場合もあるため、その時の市場価格によっては損失が発生する可能性もあります。

このような事態を防ぐためにも、複数の証券口座で資産を分散しておくことが大切です。

自分に合った証券会社が見つかる

投資を始める際は複数の証券口座を用意しておくと、自分に合った証券会社が見つかりやすくなります。

まずはそれぞれの証券会社がどのような商品を扱っており、サービスや手数料が他社とどのように違うのかを比較してみましょう。

実際に取引ツールやアプリをインストールし、使いやすさや画面の見やすさを確認するのも大切です。

複数の証券口座を使いながら徐々に投資に慣れることで、自分に合う証券会社が選びやすくなるでしょう。

証券口座を複数持つデメリット

証券口座を複数持つデメリット

証券口座を複数持つと数多くのメリットがある反面、次のようなデメリットも発生します。

  • 証券口座や資金の管理が手間となる
  • IDやパスワードの管理が大変になる
  • 確定申告が必要になる場合がある

それぞれのデメリットを詳しく解説します。

証券口座や資金の管理が手間となる

証券口座を複数持つと、その分管理に時間や手間がかかります。

たとえば確定申告をする場合、証券会社ごとに利益額と損失額を明確にしなければなりません。

株式やFX、債券といったさまざまな商品の取引を行っていた場合、取引情報を把握するのが困難となり、所得計算の手続きも煩雑化します。

複数の証券口座を持つなら、「SBI証券で取引するのは株式のみ」というようにルールを設けましょう。

事前に証券会社を使う目的や商品ルールを設定しておくことで、管理の複雑さや混乱をある程度防げます。

IDやパスワードの管理が大変になる

証券口座を複数持つことでIDやパスワードの管理が煩雑化してしまうのもデメリットのひとつです。

自分の大切な資産を預ける証券口座は、第三者に特定されない複雑なログイン情報を設定すべきですが、全てのIDやパスワードを記憶するのは簡単ではありません。

ログイン情報を紙にメモしておく場合でも、紛失や盗難のリスクが高まってしまうでしょう。

複数の証券口座のIDやパスワードを管理する際は、次のような対策をとることをおすすめします。

  • エクセルに情報をまとめて簡易的なパスワードをかける
  • 専用のパスワード管理ツールを活用する
  • 紙で保存する場合は、保管場所を2ヶ所に分けたりダミー文字を混ぜたりと工夫する

確定申告が必要になる場合がある

投資で利益が出ると「確定申告」をして税金を納める必要があります。

ただし、口座開設時に「特定口座(源泉徴収あり)」にしておくと、証券会社が納税手続きをしてくれるため確定申告は不要です。

しかし、複数の証券口座で取引をしている場合、特定口座でも確定申告が必要になるケースがあります。

たとえばA社の口座で年間100万円の利益、B社の口座で年間40万円の損失が発生したとします。

この場合、原則として「損益通算」ができるため、100万円から40万円を差し引いた60万円の純利益に税金が課されます。

しかし、A社とB社の損益は自動的に通算されないことから、確定申告しなければ100万円の利益に課税されてしまいます。

  確定申告しない場合 確定申告した場合
A社の利益 100万円 100万円
B社の利益 自動通算されないので0円 40万円
損益通算後の純利益 100万円 60万円
納税額(税率約20%) 20万円 12万円

上記の通り、適正に損益通算を行うには確定申告を行い、A社の利益額とB社の損失額を申告しなければなりません。

特定口座ではA社の利益が確定した時点ですでに約20万円分の税金が差し引かれているため、確定申告をして差額の8万円を還付してもらうということです。

複数の証券口座を保有する場合、確定申告ができるよう各社の損益情報をしっかりと把握しておきましょう。

証券口座を複数持つ場合の確定申告について

証券口座を複数持つ場合の確定申告について

前述した通り、複数の証券口座で利益と損失が発生した場合、「確定申告」をするとお得になります。

その理由は、投資には「損益通算」と」繰越控除」という仕組みが存在するからです。

ここでは損益通算と繰越控除の仕組みを詳しく解説します。

損益通算

損益通算とは、1年間の利益と損失を相殺する方法です。

種別の異なる複数の所得の損益を相殺する方法として活用されています。

たとえば、株式の配当金で30万円の利益を得た場合、配当所得が30万円として計算されます。

一方で株式の売買で10万円の損失が発生すると、譲渡損失(譲渡所得における損失)となり、配当所得(30万円)から損失(10万円)を差し引いて最終的な所得を20万円にできます。

所得金額が低いほど納税額を抑えられるため、損益通算には節税効果があるということです。

上記のほかにも、前述のようにA社で利益が、B社で損失が発生した場合も損益通算を行えます。

損益通算をするには、確定申告を行って正確な利益と損失を申告する必要があることを留意しておきましょう。

繰越控除

繰越控除とは、本年分の損失が利益よりも大きい場合に、翌年以降にその損失を繰り越して控除できる制度です。

繰越控除を行える期間は最長3年です。

たとえば、2020年(令和2年)に500万円の損失が、2021年(令和3年)に400万円の利益が発生したとします。

繰越控除を行えば、2021年の利益から前年度の損失を控除できるため、最終的な所得はマイナス100万円となり税金が免除されます。

また、2021年に発生した100万円分のマイナスも最長3年間繰り越せる仕組みです。

繰越控除は、複数の証券口座を運用していた場合でも同様に適用されます。

ただし損益通算と同様に、繰越控除を受けるには確定申告が必要です。

損益通算と繰越控除が適用される所得の種類

損益通算と繰越控除の適用可否は「所得区分」によって異なります。

適用可能な所得区分は次の通りです。

グループ 所得区分 主な利益計上方法
株式
投資信託
債券
譲渡所得 ・株式の売買益
・投資信託の売買益
・債券の売買益
・信用取引の決済益
・信用取引の配当落調整金
配当所得 ・株式の配当金
・投資信託の分配金
・公社債投資信託の分配金
利子所得 ・債券の利息
・銀行預金の利息
先物
オプション
FX
雑所得
(申告分離課税)
・FXの売買益
・FXスワップポイントの利益
・先物取引の決済益

損益通算や繰越控除は、同じグループのなかだけで適用される仕組みです。

例えば株式とFXは損益通算することができません。

また、総合分離課税の雑所得に分類される仮想通貨のように、損益通算や繰越控除ができない金融商品もあります。

参考:​​マネックス証券株式会社「確定申告 損益通算・一覧表」

証券会社は目的別に使い分けるのがおすすめ

証券会社は目的別に使い分けるのがおすすめ

ここでは、目的別におすすめの証券会社の組み合わせを紹介します。

  • 手数料を安く抑えたい場合
  • IPO投資をしたい場合
  • 米国株に投資したい場合
  • 少額投資をしたい場合

手数料を安く抑えたい場合

手数料を安く抑えたい方には、次の3つの証券会社がおすすめです。

以下の表は、国内株式投資を行う場合の各社の手数料です。

  SBI証券 SBIネオトレード証券 DMM 株
一律プランの手数料※1 99円 88円 88円
定額プランの手数料※2 無料 無料

※1:1注文の約定代金が10万円以下の場合
※2:1日の約定代金が100万円以下の場合

SBI証券はほかの2社に比べて少し割高ですが、手数料の1.1%分のポイントを獲得できるメリットがあります。

IPO投資をしたい場合

IPO投資を行いたい方には、次の3つの証券会社がおすすめです。

  SBI証券 SMBC日興証券 楽天証券
IPO引受社数 117 76 70
関与率 97.5% 63.3% 58.3%
特徴 銘柄数が業界最多
IPOチャレンジポイント
主幹事銘柄数が豊富 銘柄数が急速に増加中

このなかでもSBI証券は、「IPOチャレンジポイント」という独自サービスを提供しています。

IPOチャレンジポイントとは、抽選に外れた際に獲得できるポイントを貯めるほど次回以降の当選確率が上昇するサービスです。

ポイントには有効期限がなく、効果的に活用すればIPO投資のパフォーマンスが向上します。

米国株に投資したい場合

米国株に投資したい方には、次の3つの証券会社がおすすめです。

  SBI証券 マネックス証券 DMM 株
取扱銘柄数 個別株・ETF:約6,000 個別株:4,535
ETF:359
個別株:2,108
ETF:245
取引手数料 0.495%
※0~22米ドル
0.495%
※0~22米ドル
無料
為替手数料 6~25銭/米ドル 買付時:無料
売却時:25銭/米ドル
25銭/米ドル

上記のうち、銘柄数の豊富さを重視するならSBI証券、手数料の安さを基準にするならDMM 株といったように選び分けると良いでしょう。

米国株を取引する場合、銘柄の買付時と売却時に為替手数料が発生します。

マネックス証券は、買付時の為替手数料が無料です。

また、SBI証券で住信SBIネット銀行を利用していると、片道の為替手数料を1米ドルあたり6銭に抑えられます。

参考:株式会社SBI証券「【米国株式取扱銘柄数6,000銘柄突破!】多数のリクエストにお応えし、米国株式を823銘柄超追加!(5/26~)」
参考:マネックス証券株式会社「現物取扱銘柄」
参考:株式会社DMM.com証券「米国株式一覧」

少額投資をしたい場合

少額投資を行いたい方には、以下4つの証券会社がおすすめです。

証券会社 特徴
LINE証券 1株取引に対応しており、21時まで注文を受け付けている
SBI証券 1株取引に対応し、買付手数料が無料に設定されている
マネックス証券 1株取引をNISAやジュニアNISAにも適用できる
PayPay証券 株式は1,000円から、ETFは100円から買付可能

株式投資を行う際は本来、1単元(100株)単位で銘柄を購入する必要があります。

しかし、単元未満株に対応している証券会社なら、最低1株から銘柄を購入できます。

必要になる元手は数百円から数千円程度で済むため、少額から投資を始めたい方におすすめです。

証券口座を複数持つ際の注意点

証券口座を複数持つ際の注意点

証券口座を複数持つ場合は、いくつか注意すべきポイントが存在します。

ここでは2つの注意点について詳しく解説します。

NISA口座は1人1口座まで

NISA口座(一般NISA・積立NISA)は、1人につき1つの口座しか作れません。

すべての金融機関を通じて1口座のみとなるため、たとえばA証券とB証券でそれぞれ開設することができない点に注意が必要です。

NISAは、一定の投資枠で出た利益に対する税金を非課税にする制度です。

節税効果が非常に高いこともあり、日頃からよく使用する証券会社でNISA口座を開設すると良いでしょう。

開設できるのは1社につき1口座まで

1つの証券会社で開設できる口座は、1人につき1つまでです。

これは一般口座であろうと特定口座であろうと変わりません。

特定口座は一般口座と異なり、証券会社に1年間の損益情報をまとめた年間取引報告書を作成してもらえます。

また、特定口座を「源泉徴収あり」にしておくと、自身で確定申告をする必要がありません。

一般口座よりもメリットが多いため、基本的には特定口座を解説することをおすすめします。

まとめ:証券口座を複数持って使い分けよう

証券口座を複数持って使い分けよう

証券口座は、さまざまな証券会社で複数開設できます。

複数の証券口座を保有することで、証券会社特有のサービスをそれぞれ受けられるほか、リスクヘッジや取引コストの抑制につながるため、1つの口座を使うよりもお得です。

複数の証券口座を使いながら、自分に合う証券会社を見つけましょう

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