「ナンピン買い」とは、株を購入した価格よりも値下りしたタイミングで買い増し、平均取得単価を引き下げる投資手法です。

損失を軽減したり、利益を増やすための手法として活用されています。

上手に活用できると大きな利益を狙えますが、投資経験の浅い方が安易にナンピン買いをすると大きな損失につながる可能性があります。

この記事では、ナンピン買いの成功例や購入タイミング、メリットデメリットや注意点について解説します。

リスクや注意点を理解して投資手法の一つとして取り入れるかの参考にしてください。

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ナンピン買いとはどういう意味?

ナンピン買いとはどういう意味?

「ナンピン買い」を漢字で表記すると「難平買い」です。

「難」は「損失」を意味し、「平」は「平均化する」を意味します。

「難を平す」ことから、損失を平均化するために買い増す行為を指します。

株価の下落時に買い増しをする手法のこと

ナンピン買いは、株価や投資信託の基準価格が下落したタイミングで買い増しする手法のことです。

下落したタイミングで買い増しすることで、平均取得価格を下げられます。

ナンピン買いで期待できる効果は「損失の軽減」と「利益の拡大」です。

元の価格に戻るにつれて、下落時に購入した部分が利益を生むため、損失の軽減や利益の拡大につながります。

場合によっては±0円まで相殺できるだけでなく、元々の購入価格に株価を戻す前でも含み益に転じる可能性があります。

注意点は、買い増した銘柄の今後の値上がりが前提である点です。

ドルコスト平均法との違い

「ドルコスト平均法」は、特定の銘柄を定期的に一定額購入する手法です。

株価が上がっても下がっても一定の金額を機械的に購入する投資方法で、感情に左右されないというメリットがあります。

例として50,000円の投資資金で、ドルコスト平均法で投資した場合と、通常の投資+ナンピン買いした場合の結果を見てみましょう。

ドルコスト平均法の場合

期間 株価 購入口数 投資額
1ヶ月目 200円 50口 10,000円
2ヶ月目 100円 100口 10,000円
3ヶ月目 150円 66口 10,000円
4ヶ月目 50円 200口 10,000円
5ヶ月目 100円 100口 10,000円
合計
516口 50,000円

ドルコスト平均法は定額で定期的に商品を購入するため、高値掴みのリスクを避けつつ、株価が下がった時に数多く購入して平均取得価格を下げる効果に期待できます。

上記の例では毎月1万円を投資していますが、株価が下落しても機械的に投資できているため、平均取得単価を抑えながら多くの数を購入できています。

ナンピン買いの場合

期間 株価 購入口数 投資額
1ヶ月目 200円 50口 10,000円
2ヶ月目 100円 300口 30,000円
3ヶ月目 150円 66口 10,000円
4ヶ月目 50円 0口 0円
5ヶ月目 100円 0口 0円
合計
416口 50,000円

ドルコスト平均法ではなく普通に投資をした場合、2ヶ月目で株価が100円に下落した時に3万円分をナンピン買いしました。

3ヶ月目には株価が150円まで回復しているため、残り1万円分も購入して株価の上昇を待っていましたが、4ヶ月目に更なる下落が来ています。

既に資金を使い切っているためナンピンすることはできず、5ヵ月目時点でドルコスト平均法との投資結果を比較すると、平均取得単価・購入口数共に劣る結果となりました。

株価がこの先どうなるかはプロでもわからないため、ナンピン買いする場合は損益がプラスになるか損失が縮小したタイミングで決済することをおすすめします。

ナンピン買いの成功例や失敗例とは

ナンピン買いの成功例や失敗例とは

成功例:平均取得価格を下げることができる

ナンピン買いには平均取得価格を下げる効果が期待できます。

例えば、既に100株持っている銘柄が以下のような場合にさらに100株購入するとします。

  • 株価が1,000円の時に100株購入
  • 現在の株価は700円でさらに100株購入
  • 平均取得価格 = (1,000円 + 700円)÷ 2 = 850円

ナンピン買いをすることで、平均取得価格が1,000円から850円に下がりました。

この状態から株価が850円に回復すると、ナンピン買いをしたことでマイナスが相殺されます。

さらに株価が元の1,000円に回復すると、1株あたりの利益は150円です。

保有数量が200株であるため、元の株価に回復しただけで、30,000円(150円 × 200株)の利益になります。

以上のことから、ナンピン買いの成功は株価が上がることが前提だということがわかります。

ナンピン買いをうまく活用することで損失を減らし、場合によっては利益を得るチャンスを作り出すことができます。

失敗例:損切りできず損失を拡大させてしまう

前述したとおり、ナンピン買いは平均取得単価を下げる効果があります。

しかし株価がその後も下落し続けてしまうと、損失が更に大きくなってしまいます。

ナンピン買いすることで保有数量が増えるため、株価が1円下落した際の評価額への影響が大きくなるからです。

例えば、既に100株持っている銘柄が以下のような場合に100株購入するとします。

  • 株価が1,000円の時に100株購入
  • 現在の株価は700円(この時点で3万円のマイナス)
  • 700円の時にさらに100株購入
  • 平均取得価格 = (1,000円 + 700円)÷ 2 = 850円
  • このあと株価が500円に下落
  • (500円 – 850円)× 200株 = – 7万円

ナンピン買いする前に損切りしていれば3万円のマイナスで済んでいたものが、ナンピン買いしたことで7万円のマイナスまで損失が拡大してしまいました。

ナンピン買いをした後に必ず株価が上昇するということはなく、逆に下がってしまうことも十分ありえます。

株価が下落したからといって深く考えずにナンピン買いをすると、損失が大きくなる可能性があります。

損失を抑えるためには、自身の投資ルールに則ったタイミングで損切りすることも大切です。

指数連動型の商品はナンピン買いと相性がいい

個別銘柄のナンピン買いは、その後も株価が下落する可能性があるため慎重に行う必要があります。

一方で「S&P500」や「NASDAQ100」など、指数連動型の商品はナンピン買いが有効であるとされています。

代表例としてはS&P500に連動する「VOO」や、NASDAQ100に連動する「QQQ」といったETFです。

連動する株価指数にもよりますが、アメリカのS&P500やNASDAQ100などの株価指数は、長期的に見て右肩上がりの値動きをしてきた実績があります。

今後も確実に成長し続けるという確証はありませんが、現在の経済成長を見れば今後も成長していく可能性が高いことが予想できます。

そのため、指数連動型の商品はナンピン買いと相性がいいといえます。

ナンピン買いの効果的なタイミング

ナンピン買いの効果的なタイミング

中長期投資を考えている場合

中長期で投資を考えている場合、ナンピン買いは効果的です。

下落相場で追加投資した後、株価が回復するまで待てる時間の余裕があるからです。

毎月定額で購入している銘柄を下落相場で買い増しする、といった形でナンピン買いを取り入れることで平均取得価格を下げられます。

その際は、中長期的に見て株価の値上がりが期待できる銘柄かどうかを確認することが大切です。

また、高配当株投資として購入している銘柄もナンピン買いにはおすすめです。

高配当銘柄を安く購入できるため、配当や分配金などのインカムゲインを効率的に増やせます。

中長期目線で投資を考えている場合は、投資対象を間違えなければナンピン買いは有効であるといえるでしょう。

下落相場から上昇の兆しが見えたタイミング

株価が大きく下がるとナンピン買いをしたくなりますが、その下落が一時的なものかを見極めるのはプロの投資家でも難しいです。

下落相場ではナンピン買いのタイミングを考えるよりも、損失を最低限にするために損切りすることを考えましょう。

一方で、下落相場から上昇の兆しが見えたタイミングでのナンピン買いは、タイミングとして効果的です。

そのまま株価が上昇すると、ナンピン買いによって平均取得価格を下げた効果による利益が期待できます。

利益の最大化を狙うのであれば、下落相場の底がナンピン買いのベストなタイミングです。

とはいえ、どのタイミングが底であるかどうかは後になってみないとわかりません。

株価が下落しているときは損切りを意識しつつ、株価回復の兆しが見えたタイミングでナンピンするようにしましょう。

ナンピン買いの計算方法

ナンピン買いの計算方法

平均取得価格の計算式

ナンピン買いをした後の「平均取得価格」は以下の計算式で求められます。

  • 平均取得価格 = 総取得金額 ÷ 保有株数

ナンピン買いをする際は、その後平均取得価格がいくらになるかも計算しておくといいでしょう。

平均取得価格の計算例

  • 株価1,000円の時に100株購入
  • 株価800円の時に追加で150株購入
  • 株価750円の時に追加で40株購入

それぞれの購入価格と総取得金額を計算します。

  • 1回目:1,000円 × 100株 = 10万円
  • 2回目:800円 × 150株 = 12万円
  • 3回目:750円 × 40株 = 3万円
  • 合計 :10万円 + 12万円 + 3万円 = 25万円

次に保有株数を求めます。

  • 100株 + 150株 + 40株 = 290株

最後に、平均取得価格を計算します。

  • 25万円 ÷ 290株 = 862円

以上により、平均取得価格が862円と求められました。

ナンピン買いのメリット

ナンピン買いのメリット

ナンピン買いの主なメリットは以下の2つです。

  • 損失を軽減する効果がある
  • 買い増した株が値上がりすれば利益も大きくなる

メリットが成立するためには、ナンピン買いした銘柄の価格が回復することが条件である点に注意してください。

損失を軽減する効果がある

ナンピン買いは1株あたりの平均取得単価を下げる効果があるため、株価下落時の損失を抑える効果があります。

株を購入した後、株価下落時にナンピン買いをし、その後株価が回復すればナンピン買いをしなかった場合と比べて損失を抑えることができます。

株価がさらに下落するかもしれないリスクはありますが、うまく使いこなせれば損失を軽減することが可能です。

買い増した株が値上がりすれば利益も大きくなる

平均取得価格は安ければ安いほど、値上がりした際に利益が大きくなります。

加えて、ナンピン買いで銘柄の保有数量が増えているため、価格が1円値上がりした際に受ける利益も大きくなっています。

銘柄と投資タイミングを見極めることで損失を軽減できるだけでなく、その後の株価上昇時により大きな利益を狙える点がナンピン買いのメリットです。

ナンピン買いのデメリット

ナンピン買いのデメリット

ナンピン買いの主なデメリットは以下の2つです。

  • 損失が大きくなる可能性がある
  • 1銘柄に資金が集中してしまう

損失が大きくなる可能性がある

ナンピン買いをした後に価格が回復しない場合、損失は拡大する一方です。

ナンピン買いをしなかった場合と比較すると保有数量が増えているため、1円の値下がりによる損失が大きくなります。

株価の下落時は安く購入できるタイミングではありますが、下落したまま回復しない場合は損失を大きくするだけである点に注意してください。

1銘柄に資金が集中してしまう

ナンピン買いで利益を狙うことを意識し過ぎると、1銘柄に資金が集中してしまいます。

1銘柄に資金が集中すると、他の銘柄を購入する資金が不足し「他の銘柄に投資できない」という機会損失につながる点に注意が必要です。

また、ナンピン買いは同じ銘柄に追加投資するため集中投資にも該当します。

集中投資は大きな利益を狙える反面、株価下落時に損失が大きくなりやすく、ハイリスク・ハイリターンな手法です。

1銘柄に集中投資してしまうとリスクヘッジができなくなるため、別銘柄への分散投資も合わせて検討するといいでしょう。

ナンピン買いの注意点

ナンピン買いの注意点

あらかじめ損切りラインを決めておく

価格の回復・上昇を期待してナンピン買いをしますが、必ずしも想定通りに上手くいくわけではありません。

ナンピン買いをした後も、価格下落が継続する可能性は十分考えられます。

そのため、損失が大きくなりすぎないように「この価格になったら損切りする」という損切りラインを決めてから追加投資することが大切です。

損切りラインを決めておけば、想定以上の損失を防ぐことができます。

想定と反対の動きをした場合のことも考えて、ナンピン買いをする際は事前に損切ラインを決めておきましょう。

ナンピン買いの資金上限を決めておく

ナンピン買いは上手くいくと利益につながるため、株価下落時の戦略として有効です。

ただし、下落が続く局面ではナンピン買いに投資資金を集中させることは避けましょう。

ナンピン買いを行う際は、資金の上限額を決めておくことがおすすめです。

あらかじめ上限額を決めておくことで、過度なナンピン買いを防ぐことができます。

結果的に1銘柄集中投資になることを防げるため、リスクヘッジにも繋がるでしょう。

まとめ:ナンピン買いは損切りとセットで考えよう

ナンピン買いは損切りとセットで考えよう

ナンピン買いは下落時に追加で購入することで平均取得価格を下げ、損失の軽減と利益の拡大を狙う投資手法です。

想定通りに価格が回復・上昇すれば大きな効果のある投資手法ですが、相場を読むことは難しく、必ずしもうまくいくとは限りません。

投資初心者には難易度が高いため、ある程度投資に慣れてきてから手段の一つとして取り入れるのがおすすめです。

ナンピン買いを行う場合は、下落時に損失が大きくなり過ぎないようにあらかじめ損切りラインを設定し、大きな損失をかかえないように注意しましょう。

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