会社員は所得税や住民税が毎月の給与から天引き(源泉徴収)されているため、どれくらい税金を支払っているかを正確に把握している人はあまり多くないかもしれません。

気付かないうちに多くの税金を引かれているケースもあり、給与明細書を確認したときに驚くこともあるでしょう。

会社員にもできる節税対策はいくつかあるため、実践できそうなものから始めてみることをおすすめします。

この記事では、会社員ができる節税対策や副業をしている場合の対策、節税する際の注意点などを解説します。

税金の負担を軽減したいと考えている方は、参考にしてください。

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サラリーマン(会社員)が税金を安くするポイント

サラリーマン(会社員)が税金を安くするポイント

会社員でも、必要な手続きや控除を活用することで節税が可能です。

会社員が税金の負担を軽減するためのポイントとして、次の2つがあげられます。

  • 控除を活用して課税所得を少なくする
  • iDeCoやふるさと納税などお得な制度を活用する
  • 副業収入を増やす 

控除を活用して課税所得を少なくする

所得税や住民税は所得によって決まり、基本的には収入が増えるほど税金が高くなっていきます。

しかし、各種控除を活用すると課税対象となる所得が少なくなるため、税金の負担を小さく抑えることが可能です。

会社員は、個人事業主と比べると利用できる節税対策の手段が多くありません。

そのため、活用できる控除を利用して少しでも課税対象となる所得を減らすことがポイントとなります。

住宅ローン控除や医療費控除などを活用し、税金の負担を軽減しましょう。

iDeCoやふるさと納税などお得な制度を活用する

課税所得を減らすために控除を活用することは大切ですが、住宅ローン控除や医療費控除を利用できる人は限られます。

住宅購入のためにお金を借り入れたり、医療費が一定額を超えたりしなければ活用できないため、すべての人が無条件に活用するのは難しいというデメリットがあります。

しかし、iDeCoやふるさと納税は比較的着手しやすいため、ほかの控除を活用できない人にもおすすめです。

それぞれのメリット・デメリットを把握した上で節税の手段として活用しましょう。

副業収入を増やす

会社員ができる節税方法として、副業収入を増やすことも一つの手段となります。

副業は所得を増やすために始める方が多いですが、上手に活用することで税金の負担も減らせます。 

たとえば同じ年収700万円でも、会社からの給与だけで700万円もらうのと給与400万円 + 副業300万円(合計700万円)ではかかってくる税金が大きく異なります。

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副業している場合の所得税について

勤務形態 給与のみ 給与+副業
収入 700万円 700万円
※給与:400万円
※副業:300万円
基礎控除額 48万円 48万円
青色申告
特別控除
65万円
経費 50万円
課税所得 472万円 413万円
所得税率 20% 20%
所得控除 約42.8万円 約42.8万円
所得税 約51.7万円 約39.9万円

上記の表のように、年収の総額が同じでも副業収入があることで税金が安くなることがあります。

ただし、上記は給与所得控除と基礎控除のみ考慮して計算したものです。

個人の事情に応じて扶養控除や配偶者控除などが使えますので、自身の税額を確認してみましょう。

サラリーマン(会社員)が実践できる主な節税対策9選

サラリーマンが実践できる主な節税対策9選

会社員が実践できる節税対策は、主に以下の9があります。

  1. ふるさと納税
  2. iDeCo(イデコ)
  3. NISA・積立NISA
  4. 配偶者控除・扶養控除
  5. 特定支出控除
  6. 不動産投資
  7. 医療費控除
  8. セルフメディケーション税制
  9. 住宅ローン控除

それぞれ基本的な特徴と、年収500万円の人が制度を活用した場合に得られる節税効果を例に解説します。

ふるさと納税(寄付金控除)

ふるさと納税(寄付金控除)

ふるさと納税とは、自分が住んでいる地域以外の自治体に寄付する仕組みです。

寄付金から2,000円を差し引いた金額が、所得税・住民税から控除・還付されます。

更に寄付先の自治体から返礼品を受け取ることもできます。

例えば、年収500万円で独身の方がふるさと納税をする場合、控除上限額の目安は約61,000円です

上記の金額が控除されるだけでなく、寄附金額に応じた返礼品ももらえるため、本来払うはずだった税金を有効活用することができます。

年収や家族構成、活用している控除によってふるさと納税の控除上限額が異なるため、事前にシミュレーションサイトを活用しましょう

iDeCo(個人型確定拠出年金)

iDeCo(個人型確定拠出年金)

iDeCoとは、公的年金に上乗せして受け取れる任意加入の私的年金制度のことです。

掛金の運用や拠出をすべて自分で行い、掛金と運用益の合計額を年金、または一時金の形式で老後に受け取る仕組みになっています。

iDeCoの大きな特徴として、以下の3つの税制メリットを得られる点が挙げられます。

  • 掛金が全額控除
  • 運用益を非課税で再投資
  • 年金として受け取るなら「公的年金等控除」、一時金として受け取るなら「退職所得控除」の対象

iDeCoは、職業や勤め先の企業年金制度によって加入区分が異なり、勤め先に企業年金がない会社員の場合は、最大で月額2.3万円まで掛金を拠出できます。

節税効果だけを見ると素晴らしいiDeCoですが、拠出した金額が「原則60歳まで引き出せない」という大きなデメリットもあります。

急な出費があった場合でも投資したお金は引き出せないため、iDeCoを始める場合はよく検討してからにしましょう。

出典:厚生労働省「iDeCoの概要」

iDeCoの税金軽減額の例

iDeCoに加入して月額1万円・2万円・2.3万円を拠出した場合の税金の軽減額は、以下の表の通りです。

拠出額(月額) 1年の税金軽減額 20歳から65歳まで
加入した場合の税金軽減額
1万円 2.4万円 108万円
2万円 4.8万円 216万円
2.3万円 5.52万円 248.2万円

毎月の拠出額が増えていくほど、節税効果は大きくなっていきます。

ただし、iDeCoに拠出したお金は原則として60歳まで引き出せないため、家計やライフイベントとのバランスを考えて拠出額を決めましょう。

NISA・積立NISA(つみたてNISA)

NISA・積立NISA(つみたてNISA)

「NISA」もしくは「積立NISA」は、毎年一定額までの投資で得た利益が非課税で運用できる制度です。

通常は利益に対して20.315%の税金がかかるため、非課税で運用できるNISA制度は大きな節税効果を得られます。

NISAは年間120万円を最長5年間、積立NISAは年間40万円を最長20年間非課税で運用することができます。

例えば、年間5%のリターンで毎月33,333円(年間約40万円)を20年間投資すると仮定し、通常の投資と積立NISAでどれだけ差が生まれるかを比較してみましょう。

項目 通常の投資 積立NISA
投資元本(毎月) 33,333円 33,333円
20年後の評価金額
※年利5%想定
約1,370万円 約1,370万円
利益確定時の税金 約280万円 0円
税引き後の金額 約1,090万円 約1,370万円

利益に対して20.315%が課税される場合、今回の例だと約280万円になるため、通常の投資では最終的な手取りが合計約1,210万円となります。

一方、積立NISAで運用した場合は非課税になるため、20年後の受取金額は評価金額そのままの約1,370万円となります。

金額が大きくなるほど非課税の恩恵が大きくなるため、資産運用に投資を取り入れる際はNISAを活用しましょう。

出典:金融庁「つみたてNISAの概要」

配偶者控除・扶養控除

配偶者控除・扶養控除とは、配偶者や扶養家族がいる場合に適用される控除です。

年末調整のときに申請することで控除が適用され、配偶者や扶養家族の年間の所得が48万円以下の場合が対象となります。

配偶者控除や扶養控除は、扶養している家族の人数や年齢によって適用される控除額が異なります。

例えば年収500万円の方の場合、控除額は以下のように変化します。

  • 配偶者のみ:約71,000円
  • 配偶者+高校生の子ども1人:約125,000円
  • 配偶者+大学生の子ども1人:約150,000円

配偶者や扶養家族の年間の所得がギリギリ48万円を超えそうな場合は、超えずに48万円以下に抑えた方が税金を安くできる可能性が高いです。

シミュレーションなどで適用される控除額を計算して上手く控除を活用しましょう。

特定支出控除

特定支出控除とは、業務に必要な費用を自分で負担し、その金額が給与所得控除の2分の1を超えた場合に適用される控除です。
控除の対象となる項目は以下の通りです。

  • 通勤にかかる費用
  • 出張等にかかる費用
  • 転勤時の引っ越し費用
  • 研修を受けるための費用
  • 業務に必要な資格を取得するための費用
  • 単身赴任で自宅に帰る際にかかる費用
  • 業務に関連する図書を購入する費用
  • 業務で着用する衣服を購入する費用
  • 業務上必要な交際費

上記の金額を自己負担し、給与所得控除額の2分の1を超えた場合は、特定支出控除が適用されます。

年収500万円の場合は給与所得控除が144万円であるため、上記の金額が72万円を超えると控除の対象となります。

制度自体はいいものですが、条件が厳しく使いこなすのは中々難しいのが難点です。

不動産投資

不動産投資

物件の家賃収入や売買差益を狙って運用する「不動産投資」は、節税効果も得ることができる投資手法です。

本業の給与所得と初年度に不動産投資で発生した赤字を損益通算することで、税金の負担を軽減できます。

不動産投資を行う場合、「減価償却」が発生します。

減価償却とは、建物や設備などにかかる費用を数年にわたって経費として計上できる考え方のことです。

つまり、不動産の費用を数年間かけて経費として計上することで、計算上の赤字を大きくして課税対象となる所得を減らすという方法です。

投資でありながら節税効果を得られる方法であるため、税負担を軽減したい方は不動産投資を検討してみてもいいでしょう。

本業の収入を不動産所得で相殺して節税する

不動産投資で発生した赤字を、本業の給与所得と損益通算することで節税効果を見込めます。

不動産では「減価償却」が発生します。減価償却とは、建物や建物付属設備の経過年数に応じて価値が減ることを考慮した経費のことです。

減価償却を利用することで経費計算上の赤字が大きくなり、課税対象額を減らすことができます。

不動産所得に経費を組み込むことで利益を少なくし、節税効果が期待できるのが不動産投資です。

医療費控除

医療費控除とは、その年の1月1日から12月31日までの間に10万円を超える医療費を支払った場合に適用される控除です。

控除の対象となる医療費は本人だけでなく、扶養家族のために支払った費用も対象となります。

例えば、年収500万円の人が病院での治療費や入院費、医薬品の費用として年間15万円を支払った場合、「15万円 – 10万円 = 5万円」が控除されます。

ただし、医療費控除は年末調整では申請できないため、確定申告をしなければならない点に注意しましょう。

セルフメディケーション税制

セルフメディケーション税制

セルフメディケーション税制とは、医療費控除の特例として2017年からスタートした制度です。
薬局・ドラッグストアなどで処方箋がなくても購入できる「OTC医薬品」の購入が12,000円を超える場合、超えた部分の金額を控除の対象にできます。

例えば、20,000円分のOTC医薬品を購入すると、「2万円 – 1.2万円 = 8,000円」が控除されます。

医療費控除を利用できるほど治療に費用がかかっていなくても利用できるため、OTC医薬品の購入が多い人は活用したい制度です。

ただし、医療費控除とセルフメディケーション税制は併用できません。

どちらを利用した方が良いか考えた上で活用しましょう。

住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)

住宅ローン控除とは、住宅ローンを利用して住宅の購入や増改築を行なった場合に適用される控除です。

「年末時点でのローン残高の1%」が控除の対象となり、入居から10年間にわたって控除が適用されます。

例えば、年末時点のローン残高が3,000万円の場合、「3,000万円 × 1% = 30万円」が控除されます。

初年度のみ確定申告が必要ですが、2年目以降は「年末調整のための住宅借入金等控除証明書」と「残高証明書」を勤め先に提出することで確定申告は不要となります。

サラリーマン(会社員)が副業している場合の節税対策

サラリーマンが副業している場合の節税対策

副業をしている会社員には、ここまで紹介してきた方法とは別の節税対策があります。

ここでは、会社員が副業をしている場合の節税対策について解説します。

ただし、会社によっては副業を認めていないケースもあるため、副業を始める際には必ず勤め先の就業規則を確認しましょう。

「青色申告特別控除」を活用する

青色申告特別控除とは、個人で事業を行うフリーランスや個人事業主が確定申告を行う際、最大65万円の控除が受けられる制度のことです。

確定申告には青色申告と白色申告の2種類があり、比較的手続きが複雑な青色申告を選択した場合には、その分控除が適用される仕組みとなっています。

確定申告の際、複式簿記での記帳や貸借対照表・損益計算書を添付すると55万円が控除、さらにe-Taxで手続きをすると65万円が控除となります。

一方で、単式簿記で記帳したり、貸借対照表・損益計算書を添付しなかったりした場合は10万円が控除されます。

確定申告ソフトを利用すれば青色申告の書類は簡単に作成できるため、副業をしている方は忘れずに活用しましょう。

なお、青色申告を利用するには事前に申請が必要となるため、期限に間に合うよう対応しましょう。

参考:国税庁:所得税の青色申告承認申請書

「家事按分」で家賃やスマホ代を経費に

自宅で副業をしている場合、家賃の一部を経費として計上することが可能な場合があります。

事業に用いている割合とプライベートの割合を「家事按分」という方法で算出し、事業に用いている割合を経費として計上することで、税金の負担を軽減する仕組みです。

例えば、家賃10万円の自宅で副業を行っており、副業に使う床面積の割合が全体の30%である場合「10万円 ×30% = 3万円」を経費として申告できます。

家事按分には明確な基準はないため、事業に用いている割合を税務署の職員にしっかりと説明することが大切です。

もし家事按分の割合をどうすべきか迷った場合は、税務署や税理士に相談してみましょう。

サラリーマン(会社員)が節税する際の注意点

会社員が節税する際の注意点

節税すると支払う税金が減るため、一見メリットが多いように見えます。

しかし、税金と控除金額の関係など、税金の知識がなければ損してしまう可能性もあります。

節税するときには、次の点に注意しましょう。

控除額には上限がある

節税対策の控除には、上限が存在しています。

やればやるほど控除が増えていくわけではなく、上限を超えると自己負担が大きくなるだけのケースがあるため注意しておきましょう。

例えばふるさと納税の場合、年収に応じた控除限度額を超えた分は控除されず、ただの寄付となってしまいます。

控除限度額を確認するシミュレーションがあるため、事前に活用する控除の限度額を確認しておきましょう。

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年収900万円の上限金額 年収1,000万円の上限金額 

節税のための支出を避ける

節税をするために支出を増やすと、負担する税金は減るものの、家計への負担が大きくなってしまいます。
そのため、税金を抑えるための支出には注意が必要です。

例えば、会社員がiDeCoをする場合は、最大で月額2.3万円を拠出できます。

しかし、毎月2.3万円の拠出は人によっては大きな負担となってしまう上に、iDeCoは原則として途中で現金を引き出すことはできません。

「節税になるから」といってなんでも手を出すのではなく、自分が無理なく活用できる範囲で控除を上手く活用しましょう。

まとめ:サラリーマン(会社員)も節税手段を活かそう

会社員も節税手段を活かそう

会社員にも支払う税金の負担を減らす節税対策の方法は多くあります。

iDeCoやふるさと納税は比較的始めやすいため、手軽なものから少しずつ始めてみることが大切です。

ただし、控除額には上限があり、節税のための支出が負担になってしまう可能性もあります。

無理に節税するのではなく、お得に活用できる制度を利用しながら税金への理解を深めていきましょう。

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