似ているようで異なる投資と投機の違い

投資と投機の違いをご存知でしょうか?言葉は似ていますが、投資と投機には大きな違いがあります。2つの違いを理解していないと、資産運用をしても大きな損失を出してしまうことになりかねません。そうならないために投資と投機の違いを理解しましょう。保有期間や利益の狙い方など様々な面から投資と投機の違いを説明していきます。
目次
投資と投機の意味の違い
まずは投資と投機の意味の違いを説明していきます。難しいことではないのですが、ここでつまずいてしまうと先に進めません。一度理解してしまえば大丈夫です。しっかりと理解しましょう。
投資の意味
最初は投資の意味から説明します。投資とは、お金を投じることによって将来的により大きな利益を得る行為です。投資される人や企業は、新しい不動産や設備や人などに資金を使うことができます。事業の業績が伸びることにより、投資した人に利益が還元されます。
一番わかりやすい例は「株式投資」です。株式会社は仕事を増やしたい時に、新しく人を雇い、設備を導入して事業の効率化をはかろうとします。ところが、自社の資金だけでは費用をまかなえないことが多く、このままでは事業を拡大することができません。そこで株式を発行して、市場から広く資金を集めるわけです。
集めた資金を使って、株式会社は業績を伸ばすことができます。会社がうまく利益を増やすことができれば、株価が値上がりし、配当金を受け取ることができるので、株を取得した投資家も利益が入る仕組みです。
投機の意味
次に投機の意味を見ていきましょう。投機もまた投資と同じように、お金を投じることで将来的により大きな利益を得る行為です。実はお金を投じる側から見ると、投資と投機の手続きに大きな違いはありません。全く同じ場合もあります。
ところが、お金を投じられる側から見ると全く違ってきます。投資の場合はお金を出してもらうことで会社の業績を伸ばすことができます。しかし、投機ではそうではなく、事業を拡大するとか、業績を伸ばすなどという行為につながるかどうかは関係がないのです。
投機する人の目的は、利益を得ることです。投機者の利益を重視し、その他の影響には関知しないという投機スタンスをとることが多々あります。
「ゼロサムゲーム」という言葉がありますが、これは「利益を得る人がいれば、それと同じだけ損をする人がいる」という意味になります。株式投資であれば全員が利益を得ることも可能です。しかし、競馬やパチンコなどのギャンブルではそうではなく、現状ではビットコイン等の仮想通貨も投機に近いと言えます。
具体的な違いとは?
ここからは「保有期間」や「利益の狙い方」など、より具体的に投資と投機の違いを見ていきます。2つの違いを理解して、資産運用に活用してください。
保有期間と売買の頻度
保有期間によって、投資と投機の違いを説明することもできます。投資は投じたお金を使って業績を伸ばすことを目的にしているので、比較的長い保有期間になる傾向があります。逆に投機は短期間で売買を繰り返し、利益を上げようとするので、短い保有期間になる傾向があります。ただし、投機においても長く保有して大きな利益を狙うという例外もあります。
売買の頻度によっても投資と投機の違いがあります。投資は長い期間保有することが多いので、売買の頻度自体も少なめです。それに対して投機は、デイトレードなど短い期間で何度も取引を繰り返すことが多いことが特徴となります。
利益の狙い方
利益の狙い方にも、投資と投機では違いがあります。投資は値上がり益だけではなく、配当金などの利益を狙うことができます。逆に投機は売買益を狙う行為です。売り買いをし、その差で利益を狙うことが多く、配当金などはあまり狙いません。
リスクの許容度
リスクの許容度にも注目してみましょう。投資はなるべくリスクを低く設定して利益をあげようとします。それに対して投機はリスクを怖れず積極的に利益を追求しにいく行為です。
たとえば、「価格変動リスク」という言葉がありますが、これは文字通り価格が変わるリスクです。銀行にお金を預ける時には、元本が保証されています。この場合、価格変動リスクはないと言えます。それに対して、株や為替は常に価格が変動しています。
もちろん投資の場合も価格変動リスクはあるわけですが、リスクが低くなるように資金を投じます。ところが、投機ではリスクが高い商品にも積極的に手を出していき、むしろ価格変動の大きなものに目をつけて変動差で利益を取りに行きます。
長期的な視点で投資するメリットと必要な費用
ここまでの説明で、投資と投機の違いを解って(いただけたのではないでしょうか。投資にも投機にもメリットとデメリットが存在します。ここから先は長期的な視点で投資するメリットと必要な費用を見ていきましょう。
預金よりも運用成績が良くなる可能性が高い
まずは、投資のメリットから見ていきましょう。過去のデータを参考にした場合、銀行に預金しておくよりも投資は運用成績が良くなる可能性が高いことがわかっています。確かに銀行などにお金を預けておけば安心ですが、大きく利益をあげるのが難しいのもまた事実です。預金の利率の低さに不満を感じている人は、投資で資金を運用することも有効な対策です。
購入時に販売手数料が必要になる
投資にかかる費用の1つは、購入時に販売手数料です。たとえば、株や為替にしても、投資信託も購入の際に手数料が必要です。
土地やマンションなど不動産では、購入時に不動産会社に仲介料を支払う必要があります。また「不動産取得税」や「登記費用」などの税金も必要です。不動産購入時に計算に入れておきましょう。
保有時に管理費用が必要になる
投資信託では、保有時に管理費用が必要になります。株や為替の場合、一部の証券会社などで口座手数料が必要になることもありますが、基本的には無料と考えてよいです。
不動産の場合、持っているだけで毎年固定資産税がかかります。また家やマンションの管理を人に頼むと維持管理費が必要になります。賃貸住宅では物件の劣化に従って修繕費が必要になるので、これも維持管理費用の1つです。
売却時に信託財産留保額が必要になる
投資信託では満期になる前に売却すると、売却時に信託財産留保額が必要になります。信託財産留保額は少し難しい単語ですが、簡単にいうと途中解約金のようなものです。
投資信託では株や債券など複数の投資先を組み合わせて資金を運用しているのですが、株などを売買するたびに手数料がかかります。あまりにも早く投資信託を売却されてしまうと、投資信託を持ち続けている人たちのコストが上がってしまうので、このような制度が作られているのです。
利益が出れば課税される
投資では、利益が出れば課税されます。たとえば、株や為替で出た利益は「雑所得」になりますし、不動産を売却すれば「譲渡所得税」や「住民税」が必要です。
不動産の場合、所有していた期間により税率が異なります。所有期間が5年未満の場合、所得税と住民税の合計で40%近くの税率になりますが、5年以上所有していれば20%程度で済むのです。これは、土地や建物などが5年未満の短期間で売買される投機の対象になることを防ぐためで、まさに投機ではなく投資を推進した法律と言えます。
お金持ちは異なる視点で区別している
それでは、お金持ちはどういった視点で投資や投機を見ているのでしょうか?実は、お金持ちは投資と投機を全く異なる視点で区別しています。具体的にどのように区別しているのか見ていきましょう。
投資に社会的意義を感じている
まずお金持ちは投資に社会的意義を感じています。もちろん、そこは投資ですからお金を儲けることも大切です。けれども、利益をあげると同時に「このお金がどう使われるのだろうか?」「この企業に投資することで、社会にどのような影響を与えるのだろうか?」といったことを常に考え続けています。人や企業を応援することを重視しているのです。
考えてみてください。世の中の人たちが全てお金目当てに動いていたら、どうなってしまうでしょう?何もかもがお金のために動き、利益追求が全ての世界。そんな世界に生きて楽しいでしょうか?このようなギスギスとした世界にさせないことを目的として資金を使っている人もいます。
投資の損失は1割までなら問題ないと考えている
普通の人ならば、お金を投資した時に最低でも投資金額は回収し、1円でも多くの利益をあげようとするはず。ところが、投資家はそうではありません。投資に社会的意義を感じているため、投資の損失は1割までなら問題ないと考えている傾向があります。
もちろん、あまりに大きな損失はいくらお金持ちでも困ります。そこで、投資の損失を1割までならOKと設定することで、利益追求と社会的貢献の間でバランスを取っているわけです。
投機は利益を追求するだけのマネーゲームと捉えている
逆に投機についてはどうでしょうか?投機家は、投機は利益を追求するだけのマネーゲームと捉えている傾向があります。ゲーム感覚でお金を動かすことで、的確な判断をくだすことができるともいわれています。
投機では「お金を儲けてやろう!」とのめりこめばのめりこむほど儲けを出すどころか損失は膨らんでいきます。投機家ははそのことを知っているので、お金をお金と考えません。ゲームのチップを賭けるようにマネーゲーム感覚で資金を投じていきます。結果、さらなるお金を得ることに成功する場合があります。
このように投機をする人は、投機は投機と割り切り、お金を稼ぐことをシステム化しています。逆に、投資家は社会貢献の役割を持たせることで単なるお金儲けとは分けて考えているのです。みなさんもお金持ちの考え方を見習って、適度にお金を稼ぐと同時に社会に対しても還元していくように心がけてみましょう。これにより、失敗を減らすことができ、有効に資金を活用することができることでしょう。
監修者:大長 伸吉(不動産コンサルタント)