【投資コラム】個人投資家の売買が多い東証マザーズ指数の仕組みと2つの取引方法

今回は個人投資家の売買比率が高いマザーズ指数について解説します。成長企業が多いので大きな利益を狙うことができますが、値下がりするリスクもあります。マザーズ指数の仕組みとともに、値動きに影響を与える原因についてもきちんと理解しておきましょう。
東証マザーズとは
東証マザーズ(マザーズ)とは、東京証券取引所が運営する新興企業向けの株式市場です。東京証券取引所の新興市場には、マザーズの他に「JASDAQ(ジャスダック)」があります。
新興市場は上場基準が東証一部や東証二部に比べて緩く、会社の規模が小さくて信用力が低くても、成長性を評価されれば上場することができます。一般に、設立後間もない若い企業が多く、現在の収益よりも将来性を買うという投資方針で取引されています。
出典:日本取引所グループ
特に、マザーズはジャスダックよりも若い成長企業が多く、赤字でも上場することができます。ただし、近い将来、東証一部へのステップアップを視野に入れているので、「高い成長可能性」が求められています。
しかし、会社の規模が小さいので発行済み株指数が少ない銘柄が多く、市場で取引される株式の流通量が少ないので株価の値動きが荒くなる傾向にあります。投資家にとって、ハイリスク・ハイリターンの投資になるので注意が必要です。
東証マザーズ指数とは
マザーズには、マザーズに上場する全銘柄を対象とした株価指数である「東証マザーズ指数」があります。東証一部銘柄や大型株は、外国人投資家や機関投資家の取引が多いのですが、マザーズは個人投資家の比率が70%あります。
ですから、東証マザーズ指数の値動きによって、個人投資家が積極的に買っているのかどうかを把握することができます。東証マザーズ指数は、個人投資家の動向を計る指標となるのです。2018年の値動きは以下のようになります。
出典:日本取引所グループ
2018年のマザーズ指数は、2017年末に比べて419.67ポイント下落し、年間の下落率は34.06%。個人投資家にとって厳しい年となりました。
日経平均株価も下落しましたが、年間の下落率は12%程度。マザーズの方が約3倍の下げになりました。新興企業が多いマザーズ指数は値動きが激しくなる傾向にありますが、それにしても大きな下げになっています。
これには、外国人投資家の存在感が高まっていることも原因として考えられます。マザーズやジャスダックなどの新興市場における外国人投資家の割合は、2018年10月までで37%と2017年末に比べて7ポイント上昇。5年前に比べて2倍強に増えました。
投資家層が広がれば個人投資家中心だった新興市場の活性化につながりますが、外国人投資家の割合が高まれば世界経済の影響を受けるようになります。
これまで日経平均株価やTOPIX(東証株価指数)などの大型株中心の指数は、外国人投資家の比率が高く(売買代金の約60%)、海外市場の値動きに大きな影響を受けてきました。
しかし、マザーズなどの新興市場は個人投資家の比率が高かったので、海外市場の影響は低かったのですが、外国人投資の割合が高まったことにより、世界の投資家心理に影響されやすくなった面があるのです。
外国人投資家は、2018年1~10月までに新興市場(マザーズ、ジャスダック)の株式を1,809億円売り越しました。2017年の売越額(219億円)の約8倍です。米中貿易摩擦やトルコなど新興国通貨安の影響で、外国人投資家の売りでました。
その結果、2018年はマザーズ指数と上海総合指数との連動性が高まりました。米中貿易摩擦の影響で上海総合指数が下落すると、外国人投資家がアジア株の比率を落とし、その影響がマザーズ指数にも及んだと考えられています。2019年も引き続き同じような値動きになるかどうかが注目されます。
上海総合指数の値動き
出典:ヤフーファイナンス
東証マザーズ指数の時価総額上位銘柄
それでは、マザーズ指数に大きな影響を与える時価総額上位銘柄を確認していきましょう。2018年12月末時点では以下のようになっています。
医薬(バイオ)や情報通信の銘柄が多いことがわかります。ただし、2018年10月から大きく上昇したサンバイオが2019年1月になって大きく下げるなど、バイオ株は値動きが荒い傾向にあります。ハイリスク・ハイリターンの市場であることは認識しておくようにしましょう。
サンバイオ株のチャートは以下のようになっています。(2019年2月1日現在)
出典:ヤフーファイナンス
マザーズを取引する2つの方法
マザーズの個別銘柄は、短期間で2倍、3倍になるような銘柄もある一方で、半値近くまで下落する銘柄もあるので、非常にボラティリティ(値動き)が大きいのが特徴です。個別銘柄はリスクが高いので、指数を売買することを検討してみてはいかがでしょうか。
マザーズ指数を売買する方法は、主に次の2種類があります。
①先物
②ETF
それぞれ、詳しく見ていきましょう。
東証マザーズ先物とは
マザーズ先物は、マザーズ指数を原資産とした先物取引です。主な特徴は次のようになります。
◆取引単位はマザーズ指数×1,000倍
マザーズ先物の取引単位は、マザーズ指数を1,000倍した金額となります。例えば、マザーズ指数が900ポイントの場合、想定元本はその1,000倍の90万円となります。しかし、マザーズ指数先物を取引する際は、実際に90万円の資金が必要というわけではなく、想定元本よりも少額の証拠金を証券会社に預けることで取引をすることができます。
◆東証マザーズ先物は証拠金取引
先物取引では、証拠金と呼ばれる担保を差し入れて取引を行います。マザーズの現物株を100万円購入するには、100万円の資金が必要ですが、マザーズ先物では少額の資金で済みます。
現在の証拠金を確認してみましょう。
2019年2月1日現在の証拠金は「1単位当たり64,000円」となっています。東証マザーズ先物の値は856ポイントです。1単位当たりの元本は以下のようになります。
マザーズ先物の元本・・・856 × 1,000 = 856,000円
つまり、証拠金64,000円で1単位(856,000円)の取引をすることができるということです。元本を証拠金で割ってみましょう。
856,000 ÷ 64,000 = 13.375(倍)
元本は85万6,000円ですから、証拠金の約13.4倍の取引をすることができます。これを「レバレッジ効果」といいます。
◆東証マザーズ指数の取引時間-夜間も取引可能
マザーズの現物株の取引は午後3時で終了しますが、東証マザーズ先物の取引時間は以下のようになります。
● 日中立会:8:45-15:15
● ナイトセッション:16:30-翌5:30
夜間でも取引できるため、海外市場の動向を見ながら取引することができます。
このように先物を使えば、少額の資金で大きな取引ができ(レバレッジ効果)、取引時間も長いので収益チャンスが多くなります。また、現物株を保有している投資家も、午後3時の引け後に悪材料がでた場合に、ヘッジとして先物を売ることで損失を軽減できる可能性もあります。
東証マザーズETF取引
少額とはいっても、東証マザーズ先物では6万円以上の資金が必要になります。また、想定元本も90万円程度と大きくなります。
もっと少額から取引したい投資家はETFを利用するのが良いでしょう。
ETFとは上場投資信託のことで、証券取引所に上場している投資信託です。株式と同じようにリアルタイムで取引することができます。
東証マザーズETF(2516)は、東証マザーズ指数の値動きに連動することを目指すETFです。2018年2月に東証に上場しました。
10株単位で取引が可能で、株価は665円(2019年2月1日時点)なので、6,650円前後で取引できることになります。
東証マザーズ先物の約10分の1の資金で取引することができるので、より少額から取引したい投資家は東証マザーズETFから始めるのが良いでしょう。
まとめ
今回は個人投資家の取引が多いマザーズ指数について解説してきました。成長企業が多いので、大きな値上がりが期待できますが、値下がりのリスクもあるので、東証一部などに比べてハイリスク・ハイリターンの取引となります。
一方で、先物やETFなどの指数を取引することで、分散効果によりリスクを軽減させることができます。マザーズ指数は日経平均株価やTOPIXとの連動性が低いので、新たな収益チャンスになる可能性もあります。
ただし、外国人投資家の比率が上がってきているので、海外の市場動向、特に上海総合指数に注意しながら取引するようにしましょう。
記事 山下 耕太郎
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